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CASE44−3 一人で耐える陣痛

病棟に着くと、

 

赤ちゃんのモニターを付けました。

 

陣痛はあるけれど、

 

やっぱりそこまで時間が縮まっているわけではなくて、

 

子宮口もそんなに開いていないと言われ、

 

「陣痛室で横になって待ちましょう。」

 

と言われました。

 

帰らなくていいんだと安心しました。

 

アロマを焚いてくださった暗い陣痛室で一人で横になって、

 

陣痛に耐えていました。

 

出産がそもそも初めてだったので、

 

出産ってこういうものなんだと思えたので、

 

「一人で耐えるなんて辛い。」

 

と言うよりは、

 

「これでひたすら耐えるんだ。

 

子宮口が開くまで頑張ろう。」

 

と思いました。

 

陣痛室に移動してから、

 

陣痛は更に強くなったように思います。

 

ガンガンガンガンと

 

誰かが鉄骨を叩いているように腰が痛くなってくるのを、

 

深呼吸して、

 

その深い息で鉄骨を叩いている人たちを

 

吹き飛ばすイメージで呼吸に集中して過ごしていました。

 

この痛みにいつまで耐えるんだろう?と思っていたら、

 

助産師さんがやってきて、

 

出血の具合をみて、

 

「かなり出血してきているから、

 

そろそろいいかもね。」

 

と言われて、

 

ドロっとした血液が出ている感覚が、

 

自分自身にもありました。

 

「じゃあ、分娩台に行きましょう。」

 

と言われ、

 

歩いていきました。

 

分娩台に乗ると、

 

内診して

 

「かなり開いてきているけど、

 

まだいきんじゃ駄目だ。」

 

と言われました。

 

いきみ逃しをすることになりました。

 

仰向けに寝ていられなくて、

 

横向いたり、

 

ベッド柵を破壊しそうなぐらい握りしめていました。

 

陣痛の波がくるたびに

 

腕が張り裂けそうなくらい力をこめていないと、

 

暴れてしまいそうでした。

 

違う部屋でも分娩している人がいたので、

 

看護師さんが点滴を交換したりしに来てくれるのですが、

 

すぐに外に行ってしまうので、

 

それが心細くてしょうがなくって

 

「行かないで。」

 

と言いたかったのですが、

 

迷惑かなと思って言えませんでした。

 

誰でもいいから側にいてほしかったです。