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帝王切開で産まれる瞬間を見たい!

我が子が産まれる瞬間を見たい、

そういう思いを抱く人は多いのではないでしょうか?

 

しかし、手術室にカメラの持ち込みができない施設は多いと思います。

ましてやコロナ禍で、

手術室での夫立会いができなくなった施設もあるかと思います。

ただでさえ、よく知らない人に囲まれての出産、

麻酔で身動きが取れなくなり、

人に命を任せている状態。

人によってはお産の進行や麻酔の影響で、

気分が悪くなったり、

吐き気があったりして、

出産に集中できない人もいるでしょう。

 

緊急帝王切開だと、

立ち会い分娩可能な施設でも、

夫の手術室への入室は不可になったり、

麻酔方法では全身麻酔を選択され、

お母さんの意識が無かったりすることがあります。

 

一生に一度しかない我が子が生まれてくる瞬間を夫婦で見届けたかった、

全身麻酔だったために自分で産んだ感じがしない、

本当に私の子かは分からない、

という気持ちになってしまうという方もいらっしゃいます。

産まれてくる瞬間をタイムリーでなくても、

後から見ることができたら、

お母さんも実感が湧きやすいのではないかと思ったりもします。

 

カメラで我が子の出産場面を記録でき、

そして残すことができたらいいのに、、、

 

 

 

アメリカのミシガン州にある

Spectrum Health Butterworth病院では、

希望すれば手術台の横にある医療用モニターで、

帝王切開時に赤ちゃんが出てくるところをモニターで見れるそうです。

 

これを実現するためには様々な問題がクリアされなければなりません。

両親が不快になる映像が含まれてしまう可能性、

ビデオが開始されていない可能性、

どこからどこまでを撮影するのか、

撮影したものをどういった形で両親に見せるのか、渡すのか、

超緊急時の撮影は可能なのか、

動画の管理方法などなど、

運用方法を十分に検討しないといけないでしょう。

 

Spectrum Health Butterworth病院のDr. Cheryl Wolfeは

「帝王切開の大半は予期していないため、

夫婦にとって、陣痛室から無菌状態の手術室に入ることに驚きを感じることが多いようです。

この取り組みは分娩の様子を見ることができるようにすることで、

分娩をより個人的な体験にすることを目的としています。

予定外のことが起きると、

特に出産という重大なことの前後では、

『あぁ、私には帝王切開が必要なんだ。どうしてなんだろう?赤ちゃんは?無事なの?』

と不安になるものです。

以前は技術がなかったためにできなかったことが、

今は実際にその過程を見ることができるという選択肢が与えられているのです。」

と述べていました。

 

自分自身に何をされているのか分からない不安、

赤ちゃんが無事に産まれてくるのかという不安、

産まれてきた赤ちゃんに何をされているのかという不安、

見えない不安、、、

そういった不安を取り除いてくれるかもしれません。

 

カメラとモニターのシステムは、

医師自身が腹腔鏡手術など他の外科手術で使用しているものと同じものだそうです。

またウォルフ博士によると、

この病院では年間約7500人の赤ちゃんを出産しており、

彼女が知る限り、

帝王切開に手術用カメラ技術を適用している国内唯一の病院だそうです。

 

 

 

赤ちゃんが産まれてくる瞬間をモニターでタイムリーに見られたお母さんは、

「一生に一度の機会だから、カメラに収めたかったのです。

帝王切開では見逃す可能性のある、

彼の最初の呼吸の瞬間を見逃したくなかった。

医療スタッフが自分の体など見たくない部分や、

見る必要のないものは隠してくれて、

小さな赤ちゃんにだけ焦点を当ててくれました。

夫は私のそばにいて、

一緒に産まれる瞬間を見ることができたのです。

カメラで見れたから帝王切開に不安はありませんでした。

産まれた瞬間に、よし、出てきた、元気そうだ、と思えたので、

非常に心強く、落ち着きました。

手術室ではいろいろなことが同時に起こっていますが、

明るい雰囲気の中で、赤ちゃんに集中することができ、

本当によかったです。

そのおかげで、出産の満足度に大きな差が出たと思います。

私は何も見逃しませんでした。」

と述べていました。

 

私自身も一人目の緊急帝王切開時、

治まらない吐き気で、

全く誕生に集中できませんでした。

同僚が手術室内を写真に収めてくれたことで、

写真を見返すたびに、

あの時のことを思い出すし、

我が子が大切に扱われていたことが見て取れます。

私にとっては周囲への感謝に溢れた出産でした。

写真という記録は、

記憶を思い起こすことにつながっています。

私も赤ちゃんも大切に扱ってもらったという記憶が、

私を満たしてくれていて、

私の活力にもなっていると思うのです。

 

 

 

これらはお母さんに意識があるケースでしたが、

全身麻酔で意識がない状態で出産せざるを得ない方も、

出産後に赤ちゃんが生まれてくる瞬間の写真や映像があると、

自分が産んだんだ、

出てくる瞬間まで私とつながっていたんだ、

間違いなく私の子だ!

と思える一助になることと思います。

お父さん自身も産まれる瞬間を見ることで、

夫婦で誕生した時の思いを共有できるのではないかと思います。

子育てにおいて夫婦で思いを共有するということは

非常に大切なことです。

 

もちろん、母児の命が最優先ではありますが、

お母さん自身が「私が産んだんだ」思えることも、

出産の次に待っている育児を行う上で、

重要な気持ちの準備だと私は思います。

 

そして、医療者としてそのようなお手伝いができると、

嬉しいなぁと思います。

アメリカでもまだ、広く一般的ではないので、

日本でも取り入れられるのか、、、

という懸念はありますが、

こういった取り組みを試みたいなぁ。。。